現代における売掛金の買取パターンについて

1.効率的な現金化の仕組みは経営陣の腕の見せ所

企業に勤務している財務・経理担当者で、とりわけ毎月の資金繰りに従事するサラリーマンにとって債権の流動化というビジネスのテーマは毎月ごとの継続的な課題であり興味が尽きないところでしょう。

売掛金を早期に現金化し、仕入れの決済に充当する、従業員の給料を支払う、借入金の返済を行っていく、とても重要で資金繰りの円滑化に寄与する部分が大きいので、できうる限りテンポよく売掛金を現金化する仕組みを作ってもらい、金利・手数料といった金融コストをかけないで対応してもらいたいというのが担当者の願うところでしょう。

売掛金の買取も含めた効率的な現金化の仕組みは、経営陣の腕の見せ所といった性格が強い業務のひとつだと考えられます。
担当者の一存だけでは売掛債権の買取といった業務は進めるわけにもいかず、必ず相手方が存在することもあり、また金融機能の仲介という部分もあることから、経営陣が判断・交渉していく分野であろうと判断されます。

債権の買取の分野で、一番メジャーなものは受取手形の割引という形をとる買い取り方式、現金化の仕組みであるといえます。
受取手形の割引は紛れもない金融取引のひとつであり、割引そのものは銀行や信用金庫といった金融機関にて行われるわけなのですが、受取手形を持ち込みする側の企業の財務諸表により審査、また割引しようとする手形の銘柄としての信用度により、割引く際の金利が決定されていきます。

企業の財務体質の良しあしは、一般従業員の責任によるものではありません。
経営陣が計画した戦略に基づいて事業を展開し、もちろんその方針を理解して実行していくのはひとりひとりの従業員ではあるわけですが、実行した結果が表される財務諸表の責任を負うのは経営陣によるわけです。

2.でんさい割引を申込する企業の財務内容によって適用金利が違ってくる

また受取手形の信用度ということについても、手形を受け取ることになった原因、つまり仕事を請け負うという判断、そもそも取引をするしないの判断は、これも一介の従業員が行うものではなく、経営陣の経営判断により成された結果なのですから、手形の信用度が低く、割り引くことがそもそもできない、割り引くことができたとしても高い金利となってしまう、これもまた経営陣の責任によるところが大といえるのです。

もちろん受取手形を割り引きした結果、当該手形が不渡りとなり不良債権となる等の事例はあり得ることではありますが、その責任は当該取引を始めることを決定した経営陣が負うべきことになります。

最近では紙でできた約束手形をやり取りするといったことは少なくなりでんさいのシステムを利用した形で電子手形を振出し、受取り、そしてまた期日前に現金化する、割り引きするということが一般的になっています。

でんさいの場合は不渡り・買戻しということはないわけですが、でんさい割引を申込する企業の財務内容によって適用金利が違ってきますから、やはり経営陣が自社企業の財務内容に負うところの責任は大きいといえるのです。

手形割引やでんさい割引の他にも、最近では売掛債権の担保融資という仕組みも開発されており、売掛債権を借入金の担保にして必要な運転資金を事前に調達するというスキームが金融機関によって提供されています。

3.売掛金の買取サービスのメリットを考える

たとえば、建設会社が元請先と工事請負契約を締結し、その契約が長期的に反復継続されるとして、資材購入費用決済資金や労務費支払資金といった必要運転資金を事前に調達したいと考えた場合に、金融機関と元請先との間で担保権の契約を締結の上、工事進捗状況によって支払われる工事代金は担保権者である金融機関に支払われ、事前調達した借入金は自動返済されるという仕組みをとるのです。

この仕組みはいわば、金融機関が工事代金という売掛債権を買取しているというスキームに他なりません。
経理担当者が売掛金の回収を担当していた際は、回収時期を想定のうえ借入申込を行い、回収時期が遅れたりした際は、借入返済の期限延長を申し込む、こういった図式があった筈ですが売掛金担保融資の場合は基本的には契約枠内での借入運用になりますから、経理担当者の立場からすれば融資金の期日管理といった事務的な煩わしさからは解放されていくことが期待されます。

売掛金の買取といったサービスは金融機関の側からすれば、金利がとれるというビジネスチャンスが広がることに他なりませんが、対応を依頼する企業側からすれば、低金利で、かつ業務上の効率化を追求できるというメリットがあるのだと考えます。

ファクタリングとは、売掛金を売却して現金化する仕組みです。

中小企業が資金を調達するというスキームひとつをとってみても多様化が進んできています。
資金繰り担当者と経営陣が一体となって、今どのような資金調達のスキームがあるのか、よく調査してみて自社に合致した形での資金調達手段を選択すべき時にきているような気がします。

金融機関の競争はまれにみる低金利下で激化の一途を辿っておりメインバンクのみならず、サブ取引行からもよい提案を引き出す可能性さえあると考えられます。

最終更新日 2025年4月25日