洋上風力発電は風力発電を洋上、つまり海の上で行うもので、陸上と比べてメリットがあることからヨーロッパを中心に導入が行われ普及が進んでいます。
世界で初めて洋上に建設された風力発電所は、1991年にデンマークで誕生したものです。
それ以降はヨーロッパ諸国がデンマークに続く形で、次々と洋上での風力発電所建設が進められました。
最初の発電所が誕生してから18年後の2009年には、ヨーロッパの広範囲で合計26カ所が建設中となります。
目次
ヨーロッパ全土の総発電量の約10%が洋上に建設された発電所で賄われている
2010年の時点において、ヨーロッパ全土の総発電量の約10%が洋上に建設された発電所で賄われている計算です。
国別ではダントツでイギリスが抜きん出ており、ヨーロッパの他の国々よりも洋上風力発電に力が入っていることが分かります。
他にもデンマークやオランダ、ベルギーにスウェーデンといった国が、洋上での発電量が多い国々です。
ちなみに、発電に必要な風力原動機のシェアは、デンマークの企業2社が市場の9割以上を占めています。
風力発電は省エネや環境負荷軽減の潮流から注目度が高く、年々発電所が増加して総発電量に占める割合も増えている状況です。
ヨーロッパでは既にかなり導入や普及が進んでいますから、今後はアメリカや中国など大国での普及が期待されます。
洋上風力発電における着床式と浮体式
洋上風力発電は発電所の基礎部分を海底に固定する着床式と、海上に浮かべた状態で発電を行う浮体式に分けられます。
これまでは着床式が主流でしたが、2017年に世界初の浮体式商用風力発電所が稼働したことから、26年目にして大きな動きが見られた形です。
着床式は浅瀬での設置に向いており、経済性や技術的なメリットから普及したといえます。
対する浮体式は船舶に似た構造を持つのが特徴で、水深の深い場所でも建設できる点がメリットです。
当然ながら完全に浮かせた状態だと流されてしまうので、船舶構造の部分は海底に固定されたアンカーにより繋ぎ止められます。
浮体式のコストが下がり普及が進めば、洋上風力発電が占める発電量は更に増えることになりそうです。
着床式と比べて設置に要するコストが低い方式ですから、優位性はありますし、世界中で洋上における風力発電のあり方を変えるとまでいわれています。
日本は発電所の設置に適した環境を有している
日本はというと、イギリスと同じ島国で海に囲まれていることから、発電所の設置に適した環境を有していると考えられます。
排他的経済水域でいえば世界の第6位に位置しますから、この強みを活かさない手はないでしょう。
ところが、日本にはヨーロッパにはない台風が存在するので、導入が簡単そうでも実はかなり難易度が高いわけです。
日本政府の見立てでは、日本において洋上風力発電が普及するとは考えていないようですが、魅力や可能性を秘める発電所ということもあり、研究そのものは進められます。
2019年に発電所の普及に関する法律の施行、経済産業省と国土交通省による優先的に整備を進める区域の発表など、少しずつではありますが着実に前進しています。
2020年には国土交通省より発電所整備の拠点に位置づけられる港湾の発表があり、限定的とはいえ導入が進むことになったといえるでしょう。
NEDOと東京電力は2013年から沖合の洋上風力発電所を運用中で、2019年からは次世代浮体式の発電システム実証機が稼働中です。
実証運転は2021年度までの予定なので、この実証で得られたデータが今後の研究開発や普及に役立てられると思われます。
洋上で風力発電をするメリットとデメリット
単純に洋上で風力発電をするメリットとデメリットを確認すると、陸地の面積に限定されない広大な海域を活かした設置が行える点がメリットに挙げられます。
数を増やせば発電量も増加しますし、大型タービンで効率的に大きな電力を得ることもできます。
陸上の風力発電は、音による健康への影響や騒音問題といったリスクを抱えています。
人々が居住する場所から離れたところに設置できれば問題ありませんが、広い土地がなければそれは難しいです。
その点、洋上なら陸地から離して設置できるので、陸上での問題が解決することになります。
風力発電は風の力でタービンを回して発電する仕組みですから、安定的に風が吹く場所に設置するのがベストです。
洋上では陸上よりも安定した海上風に期待できるので、発電量の変動が小さく抑えられます。
これらが主なメリットですが、洋上に資材を運んで建設する必要がありますから、建設コストがデメリットになります。
送電は海底に敷設するケーブルで行われますから、敷設作業とそのコストも無視できないです。
イギリスの試算によれば、洋上における風力発電所の建設総コストは約2,000億円と算出されています。
風力発電は一見するとクリーンな発電方式に思われますが、本来はないはずの巨大な建造物が洋上に現れることになるので、生態系への影響が懸念されます。
まとめ
また設置して終わりではなく、安定的に正常な稼働を続けるには定期的なメンテナンスが不可欠です。
洋上には陸上にない風力発電のメリットがありますが、デメリットも決して小さくはないので、それぞれ天秤に掛けて設置の検討や建造を決める必要がありそうです。
参考資料/Influx 洋上風力発電
最終更新日 2025年4月25日